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2024年9月30日 (月)

京都・洛北 大原逍遙2024 ~寂光院 9.4~

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大原女の小径の西の終点が寂光院。建礼門院ゆかりの寺として有名です。

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創建は古く、寺伝に依れば推古天皇2年(594年)に聖徳太子が開基となり、父の用明天皇のために建てたとあります。初代住職は太子の乳母であった玉媛照姫で、当初の寺名は名にちなんだ玉泉寺でした。パンフレットには、以来代々高貴な姫が住職を務めてきたとありますが、詳細は判らないらしく、第二代住職をおよそ500年後の人、阿波内侍としています。このあたりの割り切り方は豪快という気がしますね。

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阿波内侍は信西の娘にして崇徳天皇の寵姫で、後に建礼門院に女房として仕えたとパンフレットにあります。でも少し調べると色々とややこしい人物で、まず信西の娘ではなく孫とする説がありますね。安井金比羅宮のホームページには、崇徳天皇が金比羅宮の地にあった藤寺に殿舎を整えてそこに住まわせ、1164年に天皇が崩御された後は御尊影を観音堂に祀ったとあります。また、天皇の御遺髪を譲り受けて塚を築き、霊を慰めたとも伝えられ、その塚の跡は崇徳天皇廟として受け継がれています。阿波内侍はその後出家し、1165年に寂光院に入ったとされますが、建礼門院が生まれたのは崇徳帝が讃岐に流された翌年の事で、内侍が出家した時は10歳、平清盛に請われて幼少の娘の守り役として仕える傍ら、崇徳帝の慰霊をしていたのでしょうか。なんだかしっくり来ないですね。

これとは別に醍醐に一言寺という寺があるのですが、そこでは建礼門院に仕えていた阿波内侍が出家して、清水寺の観音様の夢告により開基となったとあります。ただ、そうすると寂光院の住持を務めながら一言寺を建てた事になりますね。でもなぜとても離れた場所に、二つの寺を持つ必要があったのかしらん。さらには系図に記されていないため実在が確認されないという説まであり、どうにも謎の多い人物です。どこから建礼門院や寂光院に繋がるのか理解に苦しむのですが、ここでは寂光院の寺伝を信じて、壇ノ浦で図らずも生き延びてしまった建礼門院が旧知の阿波内侍を頼って寂光院を訪れ、第三代住持となり阿波内侍に看取られて亡くなったとしておきます。

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建礼門院を迎えた阿波内侍は住持の座を譲り、自らは柴刈りや山菜採りなど山仕事に従事し、門院の身の回りの世話をしたと言います。その時の山仕事の衣装が後の大原女のモデルとなったと伝わります。かつて天皇の寵姫だった人が里人の様にして生きたというのは、哀れと言うよりたくましさを感じますね。

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建礼門院の最期は良く判っていませんが、一説には妹によって京に引き取られて岡崎の法勝寺辺りに暮らしたのではないかと言われています。しかし、寂光院では終生をこの寺で暮らしたと伝わっており、陵墓もすぐ隣に築かれていますね。

門院が暮らした庵の跡は本堂から道を隔てた西にあり、今は更地に石碑だけが建っています。敷地はごく狭く、当時の様子は「軒には蔦槿(つたあさがお)這ひかかり、信夫まじりの忘草」と描写されていますから、本当に山の中の庵だったのでしょう。敷地の脇には井戸の遺構が残っており、今でも水が溜まっています。

平家物語「灌頂巻」では後白河法皇がお忍びで女院に会いに来る、いわゆる大原御幸が描かれています。史実かどうかについては見解が分かれていますが、ここで女院と法皇が語らったかと思うと感慨深いものがありまかね。ただ、宝物殿にこの時の絵巻が展示されていますが、お忍びと言いながら数人の公卿のほか大勢の警護の武士達が居て、とても微行という感じでは無く、落ちぶれた女院を見物に来たという具合にしか見えません。女院が気の毒に見えてしまうのは私だけでしょうか。

寂光院は小さな寺ですが、こぢんまりとした様が山里に相応しいとも言え、それでいてどこか雅さも兼ね備えた素敵なお寺です。

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