京都・洛北 令和5年笠懸神事 ~上賀茂神社 10.15~
令和5年10月15日、上賀茂神社で笠懸神事が行われました。笠懸は流鏑馬、犬追物と共に武士の嗜みとされたもので、上賀茂神社では平成17年以来毎年10月の第三日曜日に行われています。さらに遡れば建保2年に後鳥羽上皇の行幸の際に催されたという記録があり、大変古い縁のある行事です。
笠懸には騎射を行うまでに決まり事が幾つかあり、これはその中の一つ天長地久の式です。師範が馬を左に三回、右に二回回し乗りした後に天と地に向かって弓を満月の様に引き絞り,天下泰平、五穀豊穣、万民息災を祈るという儀式です。
これは矢代振りの式と言い、師範が射手の矢を全員分集めて後ろ手に持ち、一本づつ引き抜いて射手の出場順を決めるという儀式です。
騎射はまず馬場の南から走り出し、高い位置に据えられた的を射って行きます。流鏑馬と違うのは的が竹矢来で囲われている事で、的を狙う機会が的と直角に交わる一瞬しかなく、より高度な技術を要求されます。これを遠笠懸と呼びます。
遠笠懸で三つの的を射った後は、馬場の北側から引き返し、今度は地面の左右に据えられた小さな的を射って行きます。これを小笠懸と言い、左の的を射るのを弓手筋違、右の的を射るのを馬手筋違と呼びます。弓は左手に持つため右の的を射るには身体をひねり、馬の首越しに矢を射る必要があり、大変高度な技術が要求されます。
笠懸は鎧武者の急所である顔面を狙って矢を射るための修練であり、より実践的な競技でした。そう思うと設置された的は武者の首という事であり、ちょっと怖い気がしますね。
笠懸は予選に当たる奉射と、奉射の成績上位者で競う競射があり、最後は成績上位の二人によって決勝が行われます。この日は決勝の二人が共に的を全て外してしまったため、最も的を射た人が勝者とされました。
上賀茂神社の笠懸は今年から全てテント席となり、以前の様に柵の際から写真を撮るという事は出来なくなっています。写真を撮るという事はやりにくくなりましたが、急な雨にも対応可能となっていて、実際この日も途中から強いにわか雨があり、テントのおかげで濡れずに済みました。雨の中騎射を行った騎手の方たちは大変だったでしょうけどね。
奉納料は千円、最近は拝観料と言いどこも千円が最低基準となってしまいましたね。まあこれだけ何度も騎射を見る事が出来たのですから良しとしますか。私は受付一時間前に行ったのですが、ぎりぎり最前列を確保出来ました。早い人は二時間以上前から並んでいたそうで、この行事も有名になったものです。笠懸が終わった後は加茂競馬の保存会と大日本弓馬会の対談、騎手との交流会などがあり、以前より行事が工夫されています。秋の一日、勇壮な技を存分に味わい、楽しく過ごさせて頂きました。
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コメント
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美しく飾られた馬と、烏帽子姿の武者がとても素敵です。馬に乗りながら、矢を射るって難しい技ですよね。昔の人は現代人の及びもつかない程の運動能力を持っていたんでしょうね。
投稿: | 2023年10月19日 (木) 15時51分
笠懸の騎手は手綱も鞭も持たず馬にまたがっているだけですからね、
どうやって馬と意思疎通しているのだろうと感心します。
その上弓を射る訳ですから、相当な修練が必要なんでしょうね。
昔の人は奉納とは違って戦いのため、それこそ命懸けですからね、
真剣そのものだった事でしょう。
平和な時代に生まれて良かったです。
投稿: なおくん | 2023年10月19日 (木) 21時24分